こんにちは、beesicです。
今回は一緒に活動をしているSUCHAさんの歌ってみた動画で「フォニイ」をミックスする機会がありましたので、その時に気をつけた事や自分なりの加工の方法を簡単にご紹介出来ればと思います。
気をつける部分
注意していきたい部分として、「フォニイ」はテンポが速い上にサビで上から下までトラックが鳴っており、ボーカルが埋もれてしまいがちになりやすいです。
その為、イコライザーなどでいつもより大げさに高域を強調してあげた方が意外に曲にマッチします。
実際の処理の方法
Aメロ〜Bメロ
イコライザーは100Hzぐらいをカットしています。
これは男女関係なく低域の楽器とぶつかってボワボワしてしまうのでカットする事が多いです。
そして声の通りを良くするために5khzあたりを上げています。
普段ならこれだけでイコライザーは終わるのですが、原曲を聴いた時にボーカルの高域がかなり強調されている印象を受けたので、7-8khzぐらいから20khzまで上げています。
まずはイコライザー無しの方のボーカルです
次にイコライザーをONにしたボーカルです
だいぶ高域がくっきりしたかと思います。
次は耳障りな音を除く為にディエッサーを追加しました。
その後にコンプレッサーとしてNectar Proを追加しています。
このNectar Proはがっつり音圧をあげるためではなく、あくまでこのNectar Proのコンプレッサーの音が好みなので、エフェクター的な感じで少しだけかけています。
イコライザーのみのボーカル
Nectar Proを追加したボーカル
少しだけ音量が増して、より高域がくっきりした感じがあるかと思います。
そして次にJJP-Vocalを追加します。
もう定番すぎるプラグインですが、イコライザーやコンプレッサー、そしてディレイなどが一つになっていて、適当な感じでフェーダーを動かしていく事で音圧や響きを得られます。
男性用と女性用とスイッチが用意されておりとても便利です。
今回はこのJJP-Vocalで最終的なボーカルの質感を決めていき、そこから各パート毎に少しづつ変化させていっています。
Nectar Proを追加したボーカル
JJP-Vocalを追加したボーカル(音量にお気をつけ下さい。)
かなり変わりますよね笑
Bメロまでこのままの感じです。
そしてBメロで登場する「パッパラ・・・」とハモリが入ってきます。
ここでハモリ用のイコライザーはメインのボーカルとぶつからないように、5khzだけ上げています。(普段ならこの帯域も上げないのですが、今回はメインボーカルの高域をかなり上げているため、少しだけ強調しています。)
あとはディエッサーとJJP-Vocalを追加して処理しています。
ハモリに関しては、メインのボーカルを使ってWaves HarmonyでMIDIで操作しています。
そうして作成したコーラスが以下のような感じです。
コーラスのみ
メインボーカル+コーラス
いい感じなってきました。
ちなみにコーラスは2つトラックを作成しており、それぞれ左と右にパンを振っています。(今回の場合ですとそれぞれ34ずつ振っています。)
サビ
ここからはサビです。
サビのイコライザーも高域を強調させすぎると浮いてしまう印象がありましたので、先ほどのハモリと同じ処理をしています。
そして様々な音の中でボーカルの存在感を残す為にOzone 10 Imagerを追加しています。
それでも埋もれそうな感じでしたので、メインボーカルをオクターブ下でちっちゃい音量で鳴らしています。
こうする事でボーカルの低域がしっかりとし、芯を感じられます。
メインボーカルのみ
メインボーカル+オクターブ下
ハモリに関しては先ほどと同じようにWaves Harmonyで作りつつ、サビの帯域が埋まっていて埋もれそうだったので、2トラック用意してそれぞれ25ずつパンを振って先ほどよりメインボーカルの近くに置くようにしています。
「消える・・・消える・・・」の部分はイコライザーをAメロの時と同じように高域を強調する処理をし、ディエッサーとJJP-Vocalを追加し、さらにWaves Harmonyで3音階上とオクターブ下のハモリを生成し、そこにChorusを追加しています。
より消える・・・を強調したい場合にはChorusではなく、Doublerなどでもより存在感が増して良いかと思います。
これは2トラックでメインのハモリと被らないように左右に50ずつパンを振っています。
2番Aメロ
ここはラジオのような処理がされていましたので、今回はDAW Cassetteというカセットテープの質感を出してくれるエフェクターでその質感を演出しています。
それ以降の2番Aメロ〜Bメロ
ここに関しては1番のAメロ〜Bメロの処理の仕方と同じです。
散々な・・・のパート
ここでは「響き」が大事になってくるパートです。
そして帯域も空いているので、メインボーカルのイコライザーの高域をAメロと同じようにかなり上げています。
今回、「響き」を演出してもらったのはValhallaVintage Verbです。
だいぶ余韻が残るような設定にしています。
そしてここでは左右に振れながら音を繰り返すテープディレイのような効果が施されているのですが、自分は2トラック用意してパンをそれぞれ限界まで振り、繰り返すフレーズをいくつも交互に置いていって擬似的に作っています。
そして音がどんどんと小さくなる効果はオートメーションでボリュームの値を設定する事で演出しています。
余韻のみ
メインボーカル+余韻のみ
いい感じになったかなぁーと思います。
そしてラストのサビに向かう前の「フォニイ、フォニイ・・・」の部分からはValhallaVintage Verbは切っています。
ラストサビ
ここに関しては転調する関係上、声が埋もれやすくなってしまったので、メインボーカルのイコライザーはまた高域を強調させています。
そして1のサビと同じようにオクターブ下、ハモリを施しています。
最終的な音圧を稼ぐ為に今回はOzone 10のAssistant Viewを使用してみました。
ジャンルはEDMを選び、左右の広がりを少し調整して終了です。
まとめ
どれだけ帯域の隙間を使ってボーカルを強調させられるかがこの「フォニイ」のミックスに関しては大事かと思います。
単にボーカルを強調させたいからといって、オケの音量を小さくしすぎても「フォニイ」の良さが消えてしまいますし、他の方と比べた時に迫力をあまり感じなくなってしまいます。
でも様々な事を考える必要があるため、とても成長出来る楽曲だなーと思いました。
皆さんの歌ってみた動画の参考になりましたら幸いです。
また、今回の記事作成にあたってボーカル素材の使用を許可してくれたSUCHAさんもありがとうございました!
ではまたー!
また、この「フォニイ」の歌ってみたを聞いてみると、サビ中に歌声を響かせるようにミックスされている方もいらっしゃるのですが、そのようなミックスを目指す場合にはいつもよりも大げさにリバーヴやディレイなどをかけてあげる必要が出てきます。